トータルコミュニケーション研究会

1997年7月のTC研究会第20回記念大会のアピール

TC研20年に際して

 栃木の同時法を父とし、アメリカのTCを母として、1978年、日本のトータルコミュニケーション運動は生まれました。
 それから20年、「聴者のごとくあらねばならない」とする口話法一辺倒・聴覚障害者否定・手話排除の考え方に対して、TC研は、トータルコミュニケーションの理念を掲げ、口話法の改革・ろう者/聴覚障害者として誇りのもてる生き方・手話言語の復権のために取組んできました。
 その結果、1989年には、全日本ろうあ連盟等とともに「ろう教育の明日を考える連絡協議会」を結成し、ろう教育の当事者としての聴覚障害者が自らの教育の改革に取組む道を切り開きました。
 1993年には、文部省が口話法一辺倒を改め、手話をろう者/聴覚障害者のコミュニケーション手段として認める報告書を発表しました。栃木ろう学校の同時法は、これによって、地方の一ろう学校の異端的な試みからろう教育の一般的な指針へと見事に成長転化したのです。 ろう者としてのアイデンティティ追求の結果、手話言語こそ自らの第一言語と考えるろう者が増えてきました。それに伴いTCも、バイリンガル、つまり音声語と手話言語の二言語使用をも包含する理念へと発展しつつあります。
 翻って、日本のろう教育の現状を見るとき、児童生徒数の減少・ろう学校の教育力の低下傾向が続き、ろう教育は、重大な転換を迫られています。これは、根本的には、口話法一辺倒とエリートインテグレーションという口話主義の理念に由来するものであり、この「危機」を克服しうるのはTCの理念だけだと考えます。
 ろう学校は、聞こえない子どもたちが自らに自信と誇りを持ち、日本語と手話の二言語を習得し、社会性と十分な学力を身に付けるために生き生きと学べる魅力的な教育の場へと変革されねばなりません。
 そのためには、第一に、幼児期からの手話使用を含む二言語教育の導入が求められています。ここ数年、いくつかの先進校幼稚部で手話の導入が始まっています。TC研はこうした実践の試みを広く紹介するとともに、手話使用に伴う幼児教育改革・日本語習得・聞こえる両親の手話学習などに前向きに取組み、その問題点の研究を推進します。
 第二に、インテグレーションを見直し、ろう児/聴覚障害児がろう者社会と聴者社会のいずれに対してもより良く参加し得るような統合教育のあり方を追求します。
 こうした課題を遂行するためには、TC研の内部にいくつかの専門的な研究グループーー多くのろう教育関係者・研究者・聴覚障害者等の参加を得て、広い基盤と高い専門性レベルを持つ研究グループーーを組織することも必要になるでしょう。
 TC研は、聴覚障害者とろう教育関係者を結ぶ掛け橋であり続けるとともに、21世紀の子どもたちのためのろう教育改革のパイロット(水先案内人)たることもまた私たちTC研に課せられた任務だと考えています。
 役員一同、この光栄ある任務にむけて、身を引き締めて努力する所存です。
 皆様の一層のご支援ご鞭撻をお願い致します。

1997年7月27日

トータルコミュニケーション研究会運営委員会

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