子 ど も た ち と 歩 も う 2 1 世 紀 へ

<明日に向けてのアピール(その11)>

 

 8月7日から8日までの二日間、古都・奈良で開催された「第11回ろう教育を考える全国討論集会」は、奈良ろう学校の全校あげての協力と、そして何よりも奈良ろう学校が実現している「子どもと親と教師と成人聴覚障害者の自然で温かな結び付き」という基盤の上に開催され、子どもたちと共に21世紀へ旅立つ、記念すべき集会となりました。

 参加者は、北は北海道から南は沖縄までの44都道府県に及びました。
 今集会の参加者は、ボランティア要員を含めて1005名でした。
 
 聴覚障害児の「言語指導」は、いつの間にか「子ども」の全人格の発達から離れて、それ自体が目標であるかのようになってしまいました。
 だが、子どもが人を信頼し、共感を伝え合う時、そこにはコミュニケーションが生まれ、コミュニケーションの中でこそ人間関係が育くまれ、全人的成長への道が開かれる。聴覚障害の子どもが手話のように視覚的なコミュニケーション手段を必要とするなら、必要とするという「ありのままの存在」を認め、受け入れようではないか。
 奈良ろう学校がキュードから手話の導入に進んだのは、基礎講座で藤根喜美子先生が述べたように、まさに、子どもの「ありのままの存在」を認めることでした。
 本集会の二日間のプログラムは、こうした奈良ろう学校の取組みが、子どもの輝きを生み、親のやすらぎを生み、教師の喜びを生み出していることをまざまざと示してくれました。
 記念講演で鳥越隆士氏は、奈良ろう学校の幼児の観察結果を「遊びとおしゃべりで言葉が育つ」とまとめ、「言葉は教えられるものではなく共感的なコミュニケーションの中で育つ」という見方が聴覚障害児の手話と日本語の発達においても成り立つことを述べました。さらに、鳥越氏は、「手話コミュニケーションの充実発展が日本語の読み書きにつながる」と述べ、これからどこのろう学校でも問われる「手話コミュニケーション」と「日本語の獲得」の結合という課題に対して、貴重な示唆を与えました。

 第一分科会では、デフファミリーの親から、「視覚言語の世界に住む自分たち」のありのままの存在を肯定することから前向きな生き方に変わったことが報告されました。こうしたろうの親の発言は、他の親たちにの中に、大きな共鳴を作り出しました。
 第二分科会でも、奈良の両親から「健聴者に近付けるのではなくありのままを愛する」ように自分達の意識が変わってきた経過が整然と報告され、深い感動を呼びました。
 第三分科会では、前年度の「手話による教科指導の留意点」の確認が、実際の授業を踏まえた論議へと前進しました。また、奈良ろう学校高等部生徒の参加を得て「模擬授業」が行われ、教科用語の手話の整備や教科指導カリキュラムの改善を分科会参加者が討議する新たな形式となりました。
 「健聴者に近付け」「手話を使うな」という古いろう教育の理念を批判し、「手話を使う自分」を肯定するのは一つの「障害認識」ですが、今年の第四分科会では、手話を知らない周りの人達に、どうやって聴覚障害者とコミュニケーションするかを働きかけていくのも聴覚障害者の役割である、という、さらに進んだ論議がなされました。
 第五分科会では、奈良ろう学校の「いっぽの会(ろう重複児・者を支援する会)」の活動が紹介されました。親たちが積極的に教師や地元聴覚障害者団体などと連携を取りつつ活動する中で、親自身が子どもの障害を受け入れ、母親としての喜びと一人の女性としての生きがいを得るに至った、という報告は、全国のろう重複児の関係者に大きな勇気と示唆を与えるものです。
 第六分科会では、聞こえる生徒の方が聞こえない生徒に近付いてくる魅力のある交流授業の実践も実現している反面、きちんとした情報保障と、聴覚障害児者の集団と、そして聴覚障害の肯定的な認識が依然として統合教育の課題であることも指摘されました。
 第七分科会では、一般大学で学ぶ聴覚障害学生に対する大学側の対応の不十分さが、「大学生アンケート調査」の報告で改めて浮き彫りにされました。聴覚障害者の高等教育のモデル校ともいうべき筑波技術短期大学については、昨年に引き続き厳しい注文が卒業生から寄せられ、四年制昇格への動きを機会に、大学側の一層の努力を求めたいと思います。また、ろう学校の大学進学を含む進路指導についての奈良ろう学校の先進的な取り組みが紹介されました。
 第八分科会では、東京都の「聴覚障害教育推進構想」とそれをめぐる「考える会」の取組みが報告されました。生徒数の減少には「ろう学校離れ」という面があり、これは安易なリストラで解決できる問題ではありません。聴覚障害者の生き方を無視したろう学校の古い理念と指導方法を根本から改革し、ろう学校を活性化することが問われているのは、独り東京都だけではありません。
 
 二日目全体会で「ろう学校入学式などの情報保障調査」の結果が発表されましたが、今では大半のろう学校が、手話は聴覚障害者のコミュニケーション手段であると認めるようになっています。私たちの取組みは、着実に前進しています。
 また、21世紀を担う子供たちの生きる環境を広げるために、差別法令撤廃運動が行われていることも報告されました。

 聴覚障害児者のありのままの姿を自他共に愛し、魅力あるろう学校を作り上げていきましょう。そこにこそ希望があり、21世紀に向けて歩みを共にする基盤があります。
 今集会は、奈良ろう学校の多方面の実践を全国から集まった人達が知り、大きな自信と希望をもつ集会となりました。
 「子どもたちと歩もう21世紀へ」。

 1999年8月8日 第11回ろう教育を考える全国討論集会
               (於・奈良県奈良市)

トータルコミュニケーション研究会

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